不調がおこる年齢や、症状の有無に個人差あり
日本人女性が「閉経」を迎えるのは48〜52歳が多く、その前後の約10年間を「更年期」と呼びます。
約70%を超える女性が45歳をすぎると、何らかの心身の不調があると言われ、中でも日常生活に支障があるほどの症状を総称して「更年期障害」といいます。
不調を感じる年齢や、症状には個人差があります。またその症状は100を超えると言われています。
今まさに更年期でつらいという人に、対処法があることを知っていただけたらと思います。またこの先に更年期を迎える人も、どんな症状があって、どんな対処法があるのかを知っておくと、いつか自分を助けるヒントになるかもしれません。
体におこる症状
更年期は閉経に伴う、女性ホルモン、主にエストロゲンの低下が1番の要因ですが、社会的、環境的な環境の変化やストレスなども複雑に絡み合っています。更年期障害の症状に個人差が大きい理由は、いまだに明確になっていません。
よくある体の不調としては、具体的に次のような症状があります。
・のぼせ、ほてり、発汗(ホットフラッシュ)
・冷え
・腰痛、肩こり、首こり、背中の痛み
・手足のむくみ・しびれ
・頭痛
・動悸、息切れ
・めまい、ふらつき
・肌の乾燥によるかゆみ、のどの渇き、ドライアイ
・抜け毛、薄毛
・尿もれ、頻尿
・月経異常
・腟の乾燥による性交痛
・泌尿生殖器の萎縮
・骨量減少
・脂質異常症
・動脈硬化
・吐き気、胃もたれ、胸やけなど消化器系の症状
・倦怠感
初期の更年期は、ホットフラッシュや発汗から始まるケースが多いようですが、日によってもバラつきがあるため、対応に戸惑う人も多いです。
これらの症状は、主に女性ホルモンの分泌量の変動によって引き起こされ、「更年期だから仕方がない」と思われがちです。
場合によっては別の病気が隠れていることもあるため、症状が続くときや悪化する場合は病院を受診して、医師に相談することをおすすめします。
心の不調
心理的、精神的な不調としては、具体的に次のような症状があります。
・憂鬱感
・不安感
・無気力感
・無関心
・イライラ、怒りっぽい
・集中力の低下
・物忘れ
・不眠
小林製薬の漢方・生薬研究開発グループが実施した7万人調査によると、女性は20代では些細なことでイライラする感情が、40代以降になるとイライラなどの攻撃的な感情とともに「不安」などのネガティブな感情もあらわれ、50代になると不安が徐々に強くなる感情であることが推測される結果になりました。
更年期は、両親の介護・死別によるストレスや、子育てを終えた喪失感、職場での役割の変化による負担などが重なり、精神的に不安定になる人も多いです。
女性ホルモンの低下だけでなく、こうした環境の変化が心身に不調をきたします。更年期だからと諦めないで、緩和できる方法を探りましょう。
更年期症状の治療
更年期の症状が気になったら、婦人科またはかかりつけの内科を受診しましょう。更年期障害で悩む方のための更年期外来を設けている病院もあります。また体よりも精神的な症状が気になる場合、メンタルクリニックや心療内科もおすすめです。
生理周期の乱れが3カ月以上続いたり、更年期の症状が1カ月近く続くとき、また日常生活に支障が出るようになったときが受診の目安です。
診察は、問診と血液検査、血圧測定、必要に応じて心電図検査、尿検査、内診、超音波検査、骨量測定などをおこなって、総合的に診断します。
◾️ホルモン補充療法(HRT)
更年期症への治療では、減退したエストロゲンを補う「ホルモン補充療法(HRT)」が一般的です。ホルモンの経口剤または、貼付剤(テープ状のもの)、ゲル剤(皮膚に塗布するもの)が、症状や子宮の有無、皮膚の状態などに合わせて処方されます。
エストロゲンの単独長期投与によって子宮内膜がんのリスクが軽度高まるため、子宮のある方はリスクを減らすために、黄体ホルモン製剤も併用します。
◾️漢方薬
漢方薬の服用も、冷えや抗うつ、不安などの精神症状を伴う更年期症状の緩和に有効とされています。婦人科三大漢方薬と呼ばれる当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)、加味逍遙散(カミショウヨウサン)、桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)は更年期の治療によく用いられます。漢方薬も保険適用が一般的なため、負担が少なく始められる治療法です。
◾️向精神薬
更年期のイライラや不安感、落ち込み、不眠などの精神症状が強くでている場合、状態に応じて、抗うつ薬、抗不安薬、催眠鎮静薬などの向精神薬が処方されます。
セルフケア
病院を受診するほどではないと感じている方でも自分でできる、また通院しながらできるセルフケアもあります。
更年期症状を緩和するためには、食事や生活習慣を改善することも大切です。実際に医師による生活指導もおこなわれています。OTC医薬品を取り入れることも手軽に始められるケアとしておすすめです。
◾️生活改善
・定期的な運動
・健康的な食事
・夜間を涼しく過ごす
・カフェイン・アルコールなどの刺激物の摂取を減らす
・ストレスレベルを下げる(マインドフルネスなどを取り入れる)
・喫煙者なら禁煙する
・膣の乾燥に保湿剤や膣潤滑剤を使用する
◾️有用な食品・成分
以下のような成分を摂ることが良いと言われています。
・大豆イソフラボン(エクオール)
・ザクロ(ポリフェノール、タンニン、アントシアニン、フィトエストロゲン、ゲニステイン、ステロイドホルモンが含まれる)
・ローヤルゼリー
・薬用ハーブ(フィトエストロゲンが含まれる)
・ビタミン
◾️OTC医薬品
更年期症状には、ドラッグストアなどで購入できるOTC医薬品に頼るのも手軽に始められるセルフケアのひとつです。
婦人科三大漢方薬と呼ばれる当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸に加え、便秘、むくみ予防、機能回復、代謝改善に効果のある生薬、また、新陳代謝や疲労回復に重要なビタミンB群、抗酸化作用のあるビタミンE、カルシウム、タウリンが配合されたものもあるようです。気になる方はドラッグストアなどの薬剤師さんに相談してみてください。(肝機能障害のある方は、服用前に医師へ相談しましょう)。
更年期は「自分らしく」過ごすためのターニングポイント
更年期症状が原因で仕事を辞めたり、キャリアアップを諦めたりする女性は少なくありません。またこれまで、自分の健康よりも子育てや介護など、家族を優先して過ごしてきた人もいるかもしれません。
厚生労働省が2022年7月に発表した「更年期症状・障害に関する意識調査」によると、更年期の症状を自覚している女性の中で「病院を受診していない」と回答した方は、40代で81.7%、50代では78.9%にのぼりました。
本記事で紹介したように、あらゆる体調不良を引き起こすのが更年期ですが「更年期だから仕方がない」と放ってしまうと、重要な病気を見逃してしまうこともあります。不調を感じたら、迷わず医療機関を利用しましょう。
また、自分の体を労わるために、周囲に頼ることも大切です。更年期はこれまでの生活習慣や、自分の生き方を見直すチャンスと捉え、自分の体と心に目を向けて自分らしく過ごすためのターニングポイントにしてくださいね。
参考文献:月刊薬事「女性診療の疾患と薬がよくわかる ウィメンズヘルスケアのための薬の使い方」
参考サイト:
・厚生労働省 働く女性の心とからだの応援サイト
・ヘルスケアラボ 更年期障害とは
・日本女性医学学会 ホルモン補充療法 HRTガイドブック
<監修者プロフィール>
産婦人科医 柴田綾子(淀川キリスト教病院)
2011年群馬大学医学部卒業後、沖縄県立中部病院での初期研修を経て2013年より淀川キリスト教病院に勤務し、2020年より現職。主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。
若年性閉経という病気になり、30代後半で
閉経してしまいました。
急なホルモン減少をおこしたようで
更年期障害のオンパレード!
とくに頻尿と、残尿感なんて更年期障害だと
思わなかったので最初は別の病気を疑っちゃいました。
ホルモン療法をやっていますが、ビックリするぐらい
更年期症状はなくなりました。
ホントに最近はパッチタイプなど手軽に
始められるので、もっと気軽に婦人科に
行ったらいいのに…
と思うことが多々あります。
ちーさん、コメントありがとうございます!そして貴重な体験談をご共有いただきありがとうございました。たしかに突然の症状だと、すぐに更年期の問題とは結びつかなさそうですね...。
そしてホルモン療法で症状が無くなられたとのこと、良かったです!
パッチ状のもので治療ができるということ、私も最近まで知らなかったため、もっと多くの人に広まるといいなと思っております。更年期のことなど、何か知りたいことがありましたら、いつでもお気軽にコメントお寄せいただけますと幸いです。
更年期については漠然とした不安を抱えていましたが、食事や生活など自分で改善できることもあるのだと知り少し不安が軽くなりました!
amoさんいつもコメントありがとうございます!更年期対策と聞くと何をすればいいんだろう?と思いますが、知識として知っておくと生活の中で意識しやすくなりそうですよね^^
他に聞いてみたいことなどありましたら、お気軽にコメントください!いつでもお待ちしております。